Missing Period.

たりないものなあに。

ワンダービット

ワンダービット2 (MF文庫 9-8)ワンダービット2 (MF文庫 9-8)
(2007/09/01)
島本和彦

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15年前のアスキー出版の雑誌は勢いがあった。月刊アスキーは広辞苑かと見まごうほど厚く(ちょっと大げさ)、広告も多かったが記事のクオリティーが半端じゃなかった。なんていうか中身が「濃い」のだ。MacPowerしかり、EYE・COMしかり。アスキー系の雑誌を読んだあとはソフトバンク系の雑誌など読む気がしなかった。

アスキー系の雑誌の特徴は編集者が表に出ることだ。中でもログインが顕著。あの頃のログインは現在のログインの3倍は「変な」雑誌だった。編集者のほとんどがニックネームを持ち、記事の端々、ときにはど真ん中に登場していた。半分ノリで作ってんじゃねーの、というライブ感が熱かった。
そんな状況で連載に島本和彦を採用するのはいわば必然だったといえよう。

『ワンダービット』、今読み返すとギャグありの『ザ・クレーター』のような印象。
SFの短編マンガというもの自体が希少な存在だが、手塚治虫、藤子不二夫、萩尾望都が少年マンガ誌に描いたものとならんで五指に入る作品ではないか(もうひとつはふくやまけいこがSFマガジンに書いていたヤツ)。

ログイン掲載時から好きだった「山ちゃんと魔法のランプ」。
願いを1万個増やす願いをした山ちゃん。ところが3千個ぐらいで欲しいものを全部手に入れてしまい無気力な日々を送る山ちゃんは残り全部で生きがいを与えてくれとランプの精に願う……。島本節全開である。

正義の味方が多数集まり「正義」について議論するがコンセンサスが得られず煮詰まってしまう話、東京に上陸した巨大怪獣と巨大化した女子プロレスラーが戦う話、自由意志を持った電化製品の話など、今読んでもまったく陳腐化していないのが驚きだ、というか、良質のSFであることの証明だろう。

必読。

テーマ:マンガ - ジャンル:アニメ・コミック

  1. 2007/11/19(月) 15:01:35|
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こどものじかん

こどものじかん 4 特別限定版 (4) (アクションコミックス) こどものじかん 4 特別限定版 (4) (アクションコミックス)
私屋 カヲル (2007/09/12)
双葉社

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そんなに過激だろうか?
恣意的なシーンはあるがオビの惹句がアオるほど過激ではない。これで過激だと思う編集者って、子供に幻想を持ちすぎてるんじゃなかろうかと心配になる。

主人公の青木教師と小学生りん。
とりあえず青木教師は新任で頼りない。いつもりんを筆頭に生徒(児童か)に振り回されている。まずここがポイント。
学校を舞台とするドラマでは主人公の教師は「愚者」でなくてはならない。人間的に未成熟で、生徒の成長と同時に自身も成長していく、ある意味ビルディングス・ロマン的なところに大人は感情移入する。その証拠に『3年B組金八先生』がシリーズを重ねるごと――坂本金八が「熟練」していくに従って――つまらなくなっていったではないか。

ヒロインのりん、その友達の黒や美々も家族に恵まれず、ことによっては大人でさえシンドイ外的要因によるストレスを受けている。コメディー的な展開にオブラートされているが、3巻あたりからは爆発の兆しがちらほら。青木教師が対外的に立場の弱い彼らの「闇」を理解しどう昇華させていくのか非常に気になるところ。ラブコメのままでは終われない予感。『高校教師』のようなオチでは救われない状況にあるだけにある意味期待、ある意味心配。

3巻でりんが「自分が子供だ」ということに気づいてしまったのがターニングポイント。子供であることのメリットとデメリット、望む大人としての関係が「年齢」というどうしようもない壁の阻まれて築けないことへのあせり、いらだち。りんのこの葛藤にどう結末をつけるのか、ギャグにはできないわな。

「過激な」「ラブコメ」ではなくクォリティーの高いマンガとしてみたい作品。

テーマ:マンガ - ジャンル:アニメ・コミック

  1. 2007/09/28(金) 12:13:58|
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ドリームネットPAPA

ドリームネットPAPA 1 (1) ドリームネットPAPA 1 (1)
柴田 亜美 (1997/10)
講談社
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柴田亜美はおもしろい。笑いとペーソスなんぞではなくて、毒を大量に含んだギャグとなんだか知らんが感動が両立してしまう、その存在感に圧倒される。

『ドリームネットPAPA』はゲーム業界にいる父と、離婚した母親が残した天才の赤ん坊(例によって目つき悪し)の話だが『Papa told me』とは違った父子家庭像を見せてくれる。父も息子も互いにわがままを言いあって、なおかつ互いの信頼のきずなが見える。親の従属物としての子供ではなく独立した人格で対等の関係であるのが心地よい。

登場人物はみな当然一癖も二癖もあって、スプラッタマニアの医大生とか笑ってしまう。
毎回その一癖も二癖もある人物の抱える悩みなんかがクローズアップされて、ギャグを折りはさみながらその悩みを解決していくわけだが、弟を失い医学に絶望した教授の話には迂闊にも涙ぐんでしまった。

「こころなんて作らなくていいんだ」
なんてセリフが一エピソードに一つはあり、スラップスティックに分類することができず、いつも本棚のどこに置こうか迷ってしまう本だ。

読むべし。

テーマ:漫画の感想 - ジャンル:本・雑誌

  1. 2006/11/07(火) 15:32:46|
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ジョナサンと宇宙クジラ

ジョナサンと宇宙クジラ ジョナサンと宇宙クジラ
ロバート・フランクリン ヤング (2006/10)
早川書房
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ロバート・F・ヤング。
「叙情派」SFなるカテゴリがあるかどうかはわからないが、SFの北の方、ファンタジー寄りの文脈ではジャック・フィニィと並んで評されることの多い作家だ。

昨今のハード寄りのSFに慣れた向きにはセンスもワンダーもあったもんじゃないだろうが、科学はひとつの手段に過ぎず、日常から離れた状況での人間のありようを描く、という文学としてのSFを了解している向きには受け入れられるだろう。

RPGのような世界の危機も、認識を根底から覆すようなテーゼもなく、たとえば昔話を聞いているような静かな優しさが漂う。
「いかなる海の祠に」の中で、店先にディスプレイされている巨大な靴をプレゼントするエピソードはそれを如実に示しているものだ。

テレビドラマやゲームの紋切り型ストーリー展開に飽きたらぜひ手にとって欲しい。

惜しむらくは復刊して川原由美子の美しい表紙じゃなくなったこと。

かの有名な「たんぽぽ娘」はまだ読む機会に恵まれない。集英社さん、復刊をお願いします。

テーマ:SF小説 - ジャンル:本・雑誌

  1. 2006/11/04(土) 20:49:08|
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Papa told me

Papa told me (27) Papa told me (27)
榛野 なな恵 (2004/01/19)
集英社
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知世の「はとこ」の強くんの家庭環境がこの『Papa told me』全編を端的に表しているのかもしれない。権力志向・上昇志向の家族とそうでない自分。愛している家族との価値観の相克に悩み、理解してくれる人とのひとときの会話に潤う。

逃避としてではなく積極的な肯定として価値観の違いを受け止める。決して自己満足ではなく葛藤さえよしとする自然体。

「北原さんや百合子ちゃんのようなデリカシーのある」
この物語のキーワードはこの知世のセリフがいい切っている。
デリカシー。
気配りというより他人の生き方を尊重する包容力のようなもの。
デリカシーのない人は嫌われるという。価値観の押しつけがこれにあたる。

書評などにあるようにこの『Papa told me』は癒しというより道しるべだ。
より気持ちよく生きていくための。そしてもっと大人になるための――。

テーマ:マンガ - ジャンル:アニメ・コミック

  1. 2006/10/30(月) 15:26:25|
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おじさんへの「マリみて」のすすめ

マリア様がみてる―レディ、GO! マリア様がみてる―レディ、GO!
今野 緒雪 (2003/10)
集英社
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忘れがちなことだが「マリア様がみてる」シリーズは小説として面白い。

コバルトシリーズによくある梗概を読まされているような薄っぺらさや、行動の裏づけとしての感情の動きにどうしても合点がいかないというようなことがない。キャラクターがきちんと立っていて感情の動きが丹念に描かれていて好感が持てる。

この『マリア様がみてる―レディ、GO!』は体育祭の話。特に印象的だったのは令と並んで走る由乃をみて祐巳が涙ぐむシーン。祐巳と由乃の友情の深まりを感じさせると同時に「少女小説」であるということを妙に実感した。だってヤロー同士だったらここは泣くところじゃないしさ。
あとは玉入れ(劇中では玉逃げ)のかごを背負った志摩子を「ひなたぼっこする老描」と由乃が評し(言いえて妙!)、果敢に玉を入れに行くシーン。好き勝手いえるのは信頼の証であります。表紙の由乃はやっぱりテンション高いし。

このシリーズを女性同士の擬似恋愛としかとらえられないようならば、それは読み手の想像力欠如でしかないし、表紙に恐れをなして読まないというのはまことにもったいないことだ。
娘との話題づくりでも学生時代への郷愁でもいいさ。タバコひと箱プラスアルファの小銭で買えるんだし、とくに「おじさん」といわれるようになってしまった世代に読んでもらいたい。
  1. 2006/10/25(水) 09:48:28|
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